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まずは足がちゃんと伸びるように!
股関節の悪い人は、足を真っ直ぐに延ばそうとすると鼠蹊部やその周囲に痛みが出ます。そして最終的には足が伸びない状態になります。
それが施術や自己療法によって、股関節を支える組織、大きな筋肉の緊張がとれて十分に伸びた状態になれば、治ったも同然といっていいと思います。
端的に言えば施術で、あるいは日常的に自己療法で身体の歪みを整え、臀筋群、大腿筋群、骨盤に関係する筋肉群の緊張をとっていけば股関節の痛みは軽減・解消すると言っていいのです。
ただ360度回転する自由関節ですから、それに関係する筋肉も20を超え、しかも深い部分にまで入り組んでいますから、一気に進まないのは事実です。一気には行きませんが、着実に成果を上げることはできます。あくまで施術で基本部分の問題を解消し、施術から施術の間を自己療法でつなぐことで確実にゴールに向かって歩んでいくこになります。
ゴールは見えています。施術とその時々の状態に合わせて再緊張、再癒着しないための自己療法の実施、点検、そして何より状態の変化に合わせたプログラムの修正、私の経験から気づきを深め蓄積してきた手入れ法の繰り返しで良くなっていきます。
私の場合もそうでしたが、股関節が自由に動かないから、いつしか腰を使って歩いたり、膝から下で歩くようになります。それも臀筋群、大腿筋群、骨盤に関係する筋肉群の過緊張・筋肉の癒着を物理的に解消しながら、脳への緊張解消のアプローチを行っていますと、少しずつ足が前に伸びるようになります。
足が前に伸びてきて歩くことの苦痛が減少してきますと、臀部の筋肉も使い、全身の緊張もとれ、さらに動きやすくなるという好循環が始まります。
寝る姿勢も足が伸ばせず膝を曲げて側臥位で寝るのが常でした。仰臥位では鼠蹊部に痛みが出てしまいます。足を存分に延ばして大の字に寝てみたい!
健康な人には当たり前のことですが、膝を伸ばして大の字で寝ることは大きな憧れでした。今では、今夜も大の字で寝たいから手入れしようという気持ちになることがあります。
「治す」のではなく「直す」=故障は直る!
股関節の施術の中でも一番大変なのは、実は筋肉の硬直・拘縮・癒着です。深い部分の硬直・拘縮・癒着解消にはMCCという自然形体療法独自の施術道具を使います。強い力でアプローチしますと筋組織を痛めますし、脳は力を入れて自己防御態勢をとります。それが硬直・拘縮・癒着につながり更に骨盤全体の歪みや捻じれに繋がって、いっそう股関節の緊張を促進するという悪循環に陥ります。
筋肉の硬直・拘縮・癒着解消ための基本はゆっくり、優しく、心地よい施術を基本として行い、部分的には外からの刺激が深い部分に届くよう「痛気持ちいい」程度の押圧も行います。押圧の後には組織が損屈したまま固定化しないよう損屈起こしや指撫法で筋組織を整えておくことも忘れてはなりません。
施術と並行して行う「優しい、易しい」自己療法を毎日起床時や、就寝時に習慣付けてやって頂くことで効果をご自分で感じることができるようになります。
やるたびに少しずつ好転していく気持ち良さを、慈しむように味わっていただきたいと思います。確実に少しずつ変化していきます。身体が、脳が、徐々に自然な状態を受け入れてくれます。無理やり「直そう」とするのではありません。
できることから一つ一つ「直して」いきます。「直す」という言葉を使いましたが、ついでにこの言葉について一言付け加えておきます。
股関節の痛みの原因は器械的、物理的、力学的な問題であって病気という範疇には入らないと考えています。従いまして本稿では「故障」と表現しています。
故障は器械的、物理的、力学的な問題ですので器械的、物理的、力学的な方法によって「直る」のです。その結果、当然痛みは解消します。
医学・薬学では「治る」といいますが、ここでは「直る」と表現しています。医学の範囲ではなく物理学の問題として股関節の痛みを捉えています。
器機や器具が故障すれば修理して使えるようにすればいいのです。私たちには直すための理論と方法論が確立しています。故障という物理的な問題ですから医薬でなくても直ります。ただ、故障にもいろいろな程度があります。
故障が重大なものであれば、それなりの修理期間がかかります。例えば車が衝突して大破している場合と、コツンと当たって出来た凹みでは修理の期間も直すのに要する手間も違ってきます。
故障の程度や部位などが違いますから一律に直すことはできませんが、順序を追って一つ一つ直していけば動かなかった車も動き出すのです。
ただ、一度故障した中古車のことですから直したといっても新車になるわけではありません。中古車は中古車です。再び故障しないよう点検・手入れをして大切に使って頂きたいものです。
臀筋群、大腿筋群、骨盤に関係する筋肉群の過緊張・筋肉の癒着を解消する過程で、足が軽くなり痛みが変化していく過程を感じ取って下さい。感じ取ることがさらに大きな変化をもたらすことになります。やる気が違ってきます。
やる気のあるなしは、股関節の痛み解消というある程度の期間を要する作業には大きな影響を与えます。それは、右肩上がりで一気に行けばいいのですが、途中で痛みや不調が一進一退することがあります。
ゴールまでの中間点での一進一退はもっとも不安で辛い時になります。慣れと言いますか何時しかお教えした自己療法が安易に流れた我流になっていることが多いです。特に、慣れてくるとついついやることが「強く速く」なる傾向があります。
脳に安心信号を送ることで歪みを整え、筋肉の過緊張を解消するには「優しくゆっくり」が基本です。早く良くなりたい気持ちが何時しか「優しくゆっくり」から「強く早く」になってしまう。ある意味これは人間の本能といってもいいと思います。早く良くなりたい気持ちがそうさせると思っています。
脳が安心して過緊張状態を解消すれば足は心地よく伸びていきます。早く良くなりたいと焦る時、意識的に優しくゆっくりと手入れすることを心がけて下さい。
股関節の痛みから解放されるという希望が持てない、半信半疑の時は精神的なストレスが回復を妨げます。
反対に、教わったことをやっていけば直るという確信が芽生えてくれば、痛みの軽減又は解消に拍車がかかります。直るという希望が確信できた時が股関節痛に打ち勝った瞬間であり、この時から回復は加速します。
股関節の痛みも自分自身の思いと深く関わっていることは間違いありません。自分にあったセルフコントロールも日常に取り入れたほうがいいと思います。